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2008.11.21

vol.19 インスピレーション

今月のテーマは「インスピレーション」

フラワーデザインをする際の様々なアイデアソースについて書こうと思っていたところ、新聞でこんな広告を見つけました。

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色合いモチーフに惹かれ、これは何かの時にヒントの一つになるかも・・・と思い直ぐにスクラップ
このコラムの準備をしていると必ず神様の助けがあるのですが(笑)、今月も・・・でした。

スクラップと言えば、数ヶ月前に福岡でのレッスンのために乗ったJALの機内誌で見つけたのがこの「アンリ・シャルパンティエ」の広告。

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鮮やかなピンクグリーンの色併せに目が釘付けになってしまいました。もちろん機内誌を頂いて帰りこちらも専用ファイルへ。 

この仕事を始めたばかりの頃、お花の学校の通学経験だけで特別アーティスティックな環境で育ってきたわけではない私は、一体いつまで続けられるのだろうと先のことを心配していたことがありました。

年齢と共に感性が鈍るのでは?と勝手に思い込んでいたのです。

言うほどの感性を持ち合わせていたかというと、それは疑問ですが・・・。

そんな時に、英国のフラワーショウなどでガーデンデザインの賞を数多く受賞されたデザイナーの方とお話する機会があり、そのようなことをお話したところ

「年齢を重ねる中でいろいろと見たり聞いたり経験したりしたことは全て蓄積されて行くものよ。マイナスなんてことは絶対にないわ!」

と言われたことがありました。

実のところ、それを実感し始めたのは、10数年後でした。

アイデアの蓄積という点は、かの佐藤可士和氏もおっしゃっていました。

「日々見たものや得たことが蓄積されて、ひょんなところで現れる」

というようなことを。
彼のような天才と私の話とを一緒にしてしまうのも恐れ多いのですが・・・。

かつてアドバイスされたように、日常の様々な場面で得るインスピレーションが知らず知らずの内に私の「引き出し」に蓄積されていると実感する日々ですが、今回はその「引き出し」の中身の一部をお見せしようかと思います。

何よりも積極的に情報を得ているのは海外の雑誌
フランス版(ほかに英国版などがあります)の『ELLE DECO』と、『marie claire Idees』は毎号必ずチェックしています。

パリに行く時には帰りのシャルル・ド・ゴール空港の売店で購入。
と言ってもパリに行くのは年に数回ですので日頃は丸善などで購入しているのですが、とてもお高い!(笑)

『ELLE DECO』は、インテリアホームファーニシングの雑誌で、その時の流行色アイテムなどの最新情報や、また、独特なインテリアの写真なども数多く紹介されています。

それを見て、「このお部屋にはこのような器を使ってこんなデザインの花を飾ろう」という仮想トレーニングをすることもしばしば・・・。

『marie claire Idees』は、センスの良い手作りのアイデアが満載。

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こちらでも流行のアイテムがいち早く紹介され、また、手作りページではデザイナー達のアイデアの幅広さに毎号感心させられます。

いずれも長年購読しているため、その量は膨大。
1年に2度ほど時間がある時にスクラップをしています。

そもそもこれらのスクラップは、イギリス時代に習ったアレンジメントをプレゼンテーションする際の欠かせないアイテム「ストーリーボード」を作るために始めたのがきっかけ。
「ストーリーボード」とは、アレンジメントテーマテーマカラーを決めて、デザインを起こし、そのイメージを相手方により印象的に伝えるために作られるもので、雑誌で見つけた数々の切り抜きはイメージフォトとして利用されるのです。

イギリスでは、自分のアイデアを伝える手段の一つとして「ストーリーボード」を作ることは子どもの頃から慣れ親しんでいるのだとか。

雑誌から切り抜いた写真はアイテムごとにファイルしています。

たとえば、*「クリスマス」など色々な行事に関するもの、*ファッションの「コレクション」をまとめたもの(ファッションの流行がフラワーデザインにも反映されるのです)、*色別にアイテムをピックアップした「カラー」、*大好きなハートのモチーフを集めた「ハート」、そして*「オリエンタル」「ガーデン」など・・・と区分けはかなり独断的です。

その内、ほんの一部ですが、「カラー」「ハート」「コレクション」「オリエンタル」の切抜きの数々をお見せしましょう。

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そしてもう一つ、大好きな刺繍作家、青木和子さんの『ふしぎなニードルワーク』
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も私にとってはバイブルのようなもの。

事あるごとに開いては青木さんのアイデアに唸っています。

NHKの「おしゃれ工房」の表紙を飾った48作品が披露されていますが、色合わせやモチーフのアイデアが溢れ、それらに眩暈がしてしまうほど素晴らしいご本です。

数年前に、アシスタントのかすみちゃんとさと子ちゃんを誘って、わざわざ静岡まで作品展を見に行ってしまったほど。
このコラムをお読み下さっている皆さんにもぜひご覧頂きたい1冊です。

さて・・・このようにして見たもの、触れたアイデアが実際にすぐにフラワーデザインに結びつく場合もあれば、しばらく熟成させて(?)忘れた頃に湧き上がってくる場合もあり・・・ですが、あれこれ見ながらデザインを考えるのは楽しい・・・。

来年はどのようなモチーフが流行るのでしょうか?

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プロフィール

三代川純子

フラワーデザイナー

三代川純子

三井物産株式会社人事部勤務中に恵泉フラワースクールで学び、退職後、フラワーデザインを学ぶため渡英。

「コンスタンス・スプライ」「ジェーン・パッカー」などにてディプロマ(卒業証書)を取得した後、英国王室御用達フローリスト「エドワード・グッドイヤー」にて修業。
また、パリのフルリスト「パトリック・ディヴェール」「リリアンヌ・フランソワ」にても研修を行う。

フラワーデザイナーとして、雑誌「花時間」などで多くの作品を発表するかたわら、ホテルオークラ レディースサークル(現在、ホテルオークラ本館建て替えのため休会中)では、ヨーロッパで自ら買い付けて来た資材を使いレッスンを行っている。

また、「Hanahiroプリザーブドフラワー・アカデミー」の主任講師も務める。